呉茂一訳 岩波文庫
四冊目はギリシア・ローマの詩選集です。
古代の詩人の発想ってどんな感じ?と思いながら読みました
解説によれば、花冠(ステパノシス)は、ヘレニズム時代において秀歌選集の称とのこと。歌の冠を編む、讃歌の花冠などの表現もあるようです。誉を象徴する冠と、誉を祝賀する詩歌との結びつきが生んだのだろうと書かれています。どうして花冠というタイトルなんだろうね?と話していたので、まさに解説に解説されていて有難かったです^^
まずは古代エジプトにおいて一時期信仰されたアトンへの讃歌。唯一神への讃歌というのは、役割が定まっている多神教のような神々とは、随分趣きが違うように思います。なんと表現すればよいのかまだわからないのですが、読んでいると、創や仁、慈などの言葉が目につきます。内容的にも人間側の積極的な志向があるように思うのですが。。。これはもっとよく読んでみないと分かりませんね!
そのあとは、ギリシア、ローマの様々な題材の詩が並んでいます。『ギリシア神話』を読んだときは、非道の神々に驚いたものですが、こちらを読むと、ギリシア市民と強く結びついて生活を支えてくれていたんだという神としての威厳、存在感が感じられました。
アルカイオスの、とにかく酒を飲もうじゃないか、という豪胆な調子、サッポーの格調高い描写、プローペルティウスのキュンティアへの切なすぎる調べなど、面白いです。でもめまぐるしく詩人が入れ替わるので、一息に読んでしまうとかなり大変です。
気になった詩をあげようと思うときりがないくらいです。どの詩も生活感に満ちているので、現代とは譬えが変わっただけのように感じられます。特に、当時の遊びが引用されている詩があったので、これだけあげてみたいです。
アプロディーターではなくて、
狂った恋が、子供らしさに巫山戯て遊び、
花々の上を そつと踏んでゆく、
「触らないで」をやりながら。
注釈によれば、「触らないで」というのは、高萱の柄などで突いてゆく遊びらしいです。
ふざけて遊んでいる様子が目に浮かびます。私自身はこういった遊びがちょっと苦手だった覚えがあります^^;携帯やPCゲームが盛んとはいえ、きっと保育園や幼稚園などでは、まだこういった遊びがなされてるんでしょうね。こういう生の感じならわかりやすい“じゃれあい”も、携帯やPCでは実現されにくいし、本質的に不可能な領域なのかもしれないなぁ、と思いめぐらせてみました。
久保正影さんの解説も分かりやすく、「墓碑詩という最古の詩様式が初めに写し出していた、いわばネガフィルムのような人生像は、第一部が進むにつれて、生者の声を直接に伝えるポジフィルムの画像に変化していく」という文章が響きます。この詩選の世界観を大事にされている気持ちが伝わりました。
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