2013年10月20日日曜日

3.イリアス

ホメロス著 松平千秋訳 岩波文庫

三冊目はイリアスです。
やっぱりえげつないのかな?と思いながら読みました



壮大な世界です。
人間同士の戦争に神々の思惑を絡めるという試み。。。
おかげで展開に納得のいかない点もありますが、これが古代ギリシアの世界観なのでしょうね。

文中幾度も語られる「神に定められた運命であればしかたがない」という発想、それにこの祈祷の多さ、どこかで読んだような?と思っていたのですが、思い出しました、『源氏物語』です。
文学としてとても似ているように思うのですがいかがでしょうか?
神や仏の性格はいろいろでも、人から見た場合に表明される思いは似ているのかもしれません。

ときに因果応報のようなところもありますし、名乗りの下りの長さや「男を見せろ」と叫びながら戦うところも多く、日本の武士道ともなじみやすい思考なのかもです。
訳が寄せているのかもしれませんが。

しかし、「テラモンが一子何某」「ネレウスが一子何某」など、くどい自己紹介や呼びかけに対し、私はいわゆる日本の戦隊物のような気持ちで読んでいたのですが、こちらはもっと気持ちがこもっていたようでした。
第十歌でアガメムノンがメネラオスにむかって
「―行く先々で呼ばわり、みなに目を覚ましておれと言い付けてもらいたいのだが、誰に対してもその名誉を重んじて、ひとりひとりその血統をたどり、生みの父親の名をあげて呼びかけるようにしてくれ。決して高ぶった気持ちを示してはならぬ、―」と言っています。単なる文学上の修辞、形式上の修飾ではない、真実その時代に必要とされていた礼儀なのでしょうね。(解説にも同様の趣旨)

遺体に対する思いもかなり強く、戦いにおける人間側の説明は、ほとんどその倒され方とその遺体がどうなったかということ。確か前回の『ギリシア神話』で、古代ギリシアでは、身体が全部そろっていないと冥府で困る、という思想があったと紹介されていたように思いますので、たとえあっけなく倒されてしまった人であっても、どのように扱われたかは叙述されなければならない大事な点だったのでしょう。

この本は最後に伝ヘロドトス作のホメロス伝がついていて、ホメロスその人についても想像することができます。イタケでの滞在がオデュッセウスを知る機会になった話、ホメロスというのは盲人という意味で、本来の彼の名前はメレシゲネスであること、もっと日常的な詩についての紹介など興味深いです。Wikipediaで見てみると、別の解説も掲載されているので、実際どうだったのかはわかりませんが、こういった読物を読んでいると、『イリアス』という古代の叙事詩が、トロイア戦争についての単なる無味乾燥な記録ではなく、確かに人の手によって作られた創作物なのだ、ということを実感します。(この『伝』についても解説で述べられています)

それから、この本に付いているギリシア部隊の分布も大変わかりやすかったです。
『ギリシア神話』を読むと、もっと古くは彼らの地域同士で争っていたように思うので、トロイア戦争におけるギリシア勢のまとまりっぷりにびっくりします。それだけアガメムノンの一族が強大な権力を持っていたということなのか、それとも民族的に明らかに同一だからトロイエ方に対してより敵視しているのか。。。余裕があれば時代背景も知りたいです。

ところどころに出てくる、「翼ある言葉」という表現に惹かれます。「イリスはアキレウスの近くに立つと翼ある言葉をかけ、『さあお立ち、―』」という感じで使われています。この表現に、どんな意図(歴史)があるのかは分かりませんが、とても美しい響きだなあ~^^

ところで『イリアス』『オデュッセイア』といえば、
学生時代には世界最古の叙事詩として習った気がするのですが
これは勘違いだったのかもしれません。
いま調べると世界最古の叙事詩は『ギルガメシュ叙事詩』ですね。
ついでに『ハンムラビ法典』も世界最古の法典として習った覚えがあるのですが
いまは『ウル・ナンム法典』みたいですし、
冥王星のように、発見による修正なのでしょうかね?

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